「その。
陽華さんは自分が死んだ後のこととか考えないのですか」

私は考えて、つらくなった。
本当は私なんか、いない方がいいんじゃないかって。

――朔哉が否定してくれたけど。

「僕が死んだ後ですか?
そうですね、うか様がそのときだけでも悲しんでくれたら嬉しいかな」

そのとき、それがなんだか引っかかった。

「陽華さんがいなくなって、うか様が酷く悲しむとか考えないんですか」

「うか様が?
ありえないですね。
前にも言いましたけど、僕はうか様のペットです。
ペットが死んでもそのときは悲しむかもしれませんが、すぐに忘れてしまうでしょう?
そういうものです」

そんなはずがない、そう言いたいけれどあのうか様の態度からは陽華さんが死んで悲しんでいるなど想像できない。
彼の言うとおり、なんだろうか。

「着きました。
今日も頑張ってください」

なにも返せないまま、私に与えられた仕事部屋に着いていた。
もやもやしながらドアを開ける。

「逃げ帰ってもう、来ないと思ってたのにー」

開けた途端、盛大なため息と共にうか様の声が響いてきた。