毎回、全力疾走したみたいに心臓がドキドキしてしまう。

「じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」

朔哉に見送られて鳥居をくぐる。
出口ではいつものように陽華さんが待っていた。

「おはようございます」

「今日はもう、いらっしゃらないのかと思いました」

それはそうですよね。
だって昨日、あんなにうか様に虐められたんだもん。

「これくらいでいろいろ投げ出したなんて思われたくないので」

「それはそれは……」

くっくっくっ、と陽華さんは喉の奥でおかしそうに笑った。

「昨日のうか様はたいそうお怒りでしてね。
自分に断りなく心桜様を帰してしまうなどと、叱られてしまいました」

「……すみません」

陽華さんは私がここにいる間の世話係を任されている。
余裕がなかったからとはいえ、せめてうか様には一言断ってから帰るべきだった。

「いえ、いいのですよ。
おかげでうか様がいつもよりも酷く当たってくださって、感謝したいくらいです」

思い出しているのか、陽華さんの呼吸がはぁはぁと荒くなる。
そうだ、この人は変態さんだった。