私の肩でもそもそと動く指は、どう話そうか悩んでいるかのようだ。

「でも連れてこられてしばらく観察していたら、恐ろしく鈍くさいんだよ。
なにもないところで転ける、食べるのは遅い、右って言っても左に行く。
だから差し出されたんだろうね。
でも。
――とびっきりいい顔で笑うんだ」

ふっ、と僅かに、朔哉の唇が緩む。
その子の笑顔を思い出しているのかもしれない。

「だから、妻にしたんだ。
といっても心桜みたいに正式じゃなく、おままごとの相手、かな。
でも凄く楽しかったんだ。
けれどそんな生活は長く続かなかった」

ぎゅっと、朔哉の手に力が入った。

「人間の一生がずっと短いものだって理解していた。
それでも、その子の一生はあまりにも短すぎた。
もともと身体が弱かったんだろうね、私の元へ来て三年で死んでしまった」

無意識に、朔哉の手を握っていた。
それほどまでに彼の声は深い悲しみに沈んでいたから。

「初めて泣いた。
この世の終わりかってくらい。
それからはもう、人間と関わるのはやめようって決めたんだ」

「……ならなんで」

「ん?」

「ならなんで、私を受け入れたの……?」