その男の登場に、目の前の男たちも、それを遠巻きに見ていた人々も一斉に道をあけ、恭しくあたまを下げた。

「人の子など百年ぶりくらいか」

私の前に立った男は膝をつき、その長い人差し指で私の顔を上げさせた。

「ん?
宜生(よしき)に泣かされたか。
可哀想に」

朔哉(さくや)様!」

朔哉と呼ばれた男が片手で制し、怒鳴った男は口を噤んだ。

「どうした?
恐怖で声も出ないか」

楽しそうに目を細め、朔哉と呼ばれた男はくつくつと笑っている。
「……きれい」

「ん?」

面の奥から私を見つめる瞳は、夜空のような群青と、満月のような金だった。
それが、さらさらと揺れる黒髪と相まってとても美しく見えた。

「お兄ちゃん、凄くきれいだね!」

「無礼だぞ!」

思わずぐいっと身を乗り出した私を男たちは取り押さえようとしたが、朔哉にまた制されて仕方なくやめた。

「そうか、きれいか。
……気に入った。
傷の手当てをしてやれ」

「しかしながら!」

朔哉が私のあたまをぽんぽんして立ち上がり、また周囲がざわめいた。

「……私の決めたことになにか異論があるのか」