私もうか様……でいいかな、についていけないし。

「いいじゃない、別に」

「……はぁーっ」

朔哉の口から重いため息が落ちる。
これってあれだね、わがまま社長とそれに振り回される部下の図だ。

「それで朔哉は心桜の目、潰さないの?」


言っている内容に釣り合わないほど、にっこりと綺麗にうか様の口角がつり上がる。

「……私は心桜を、大事にすると決めましたので」

面の奥から眼光鋭く、キッと朔哉がうか様を睨んだ。
けれど当のうか様はへらへら笑っている。

「えー、だって人間の嫁取りってあれじゃない?
慰み者にするのがだいたい目的」

あ、これで謎が解けた。
形としては嫁に迎えるけれど、そういうことが目的だから天照大御神様へお披露目へ行ったりしないんだ。

「……私は心桜を、そのようにするつもりはありませんので」

静かな、静かな朔哉の声が響く。
それはまるで、鋭利に研がれた刀のように鋭かった。

「えー、じゃあなんで、人間の嫁なんて取ったのよー」

うか様が脳天気な声で言う。
朔哉の発する気に私は指先すら動かせずにいたが、彼女は例外だったようだ。

「私は心桜を愛しています。