みんなが幸せになって自分も幸せになれる手段をいつも考えなさい」

「……はい」

怒られた。
でも彼のいうことはもっともだ。
自己犠牲に酔うのは簡単だが、それで救われた人は本当に幸せなんだろうか。
私だったらずっと、犠牲になった人を引きずってしまう。

ならそれは――よくない選択だ。
「私は心桜を大事にするよ。
だから心桜にも自分を大事にしてほしい」

「……はい。
ごめんなさい」

「別に怒ってなんかないよ」

仲直り、とばかりに繋いだ手が揺れる。
うん、私も朔哉を大事にして、自分も大事にするよ。

鳥居を抜けたであろう先でまた、朔哉に抱き抱えられた。
今度通された部屋は洋間みたいで、座ったのはふかふかのソファーだった。

「……倉稲魂命様って」

「新しもの好き。
うちはお願いを手書きで書き留めているけど、ここはパソコン入力しているくらいだよ」

「へー」

もしかして、普通の会社みたいだったりして。
見られるならちょっと見てみたい。

「さっくやー、おっまたせー」

少しして私の耳に聞こえてきたのは、若い女性の声だった。

「私に嫁、見せびらかしに来たんだってー?」