「我に顔を見せたくないのか」

「ち、ちが」

凄まじいプレッシャーが私のあたまを押さえつける。
それはあまりにも神々しく、それ故に――怖かった。
身体がガタガタと震え、歯の根が合わない。
あたまを上げるなど、できようはずがない。

「人間風情には無理か」

ころころとそれ――天照大御神様が笑う。
これが、偉い神様の力。

「それで。
婚姻の報告だったか」

「はい。
私、三狐神(みけつかみ)朔哉と心桜はこのたび、夫婦になりましてございます」

「それは目出度いことで。
しかし、其奴、……目を潰しておらぬな」

……目を、潰す?

背中を冷たい汗が滑り落ちていく。

潰すってなに?
あ、見えなくしてしまえば問題がないから、か。

「心桜の目を潰したりいたしませぬ」

力強い、朔哉の声が響く。
それには強い決意が表れていた。

「何故に?
自身と眷属を危険にさらすのか」

「絶対に危険などないようにいたします。
面も外しませぬ。
心桜の目を奪うなど、惨いことはしたくありませぬ」

「……好きにすればいい。
お主ごときが消えようと、替えはいくらでもいる」

「……ははっ」