なら、昔話なんかで神様の嫁になった人たちはどうだったんだろう。

「じゃあ、行こうか」

庭の隅には稲荷大社でよく見かけるように、朱い鳥居が遙か彼方まで連なっていた。

「ここを抜けると行きたい場所へ行けるんだ。
あ、それから」

するっと空中から、朔哉は広幅の紐を取り出した。

「心桜には悪いけど、目隠しをさせてもらうよ。
理由は、わかるよね?」

「うん」

私が、神様の顔を見てはいけないから。

「ずっと私が手を引くから、心配しなくていい」

そっと朔哉の手が、私の手を掴む。
少しだけ心細くて、ぎゅっとその手を握る。

「絶対に離さないから、安心して」

「うん」

朔哉に手を引かれ、そろそろと歩く。

「朔哉」

「ん?」

「その、着くまででいいからなにか話していてくれないかな」

光は感じるとはいえ、なにも見えないのは恐怖を掻き立てる。
手を掴んでいるのが朔哉だとわかっていても、本当に彼がそこにいるのか不安になった。

「いいよ。
そうだなー、新婚旅行に行かなきゃだよね。
どこがいいかな」
朔哉の声はとっても楽しそうで、その証拠に繋いでいる手が上下に揺れる。