「わかった。
じゃあ、心桜にできることを探しておくよ」

朔哉の手が私のあたまをぽんぽんする。
それは、初めて会ったあの日と同じで優しかった。

「そうだ。
心桜にひとつだけ、術が使えるようにしてあげる」

「術……?」

って、神様が使う、超能力みたいな奴のことかな。

「そう。
手を出して」

「うん」

言われて、右手を出す。
朔哉はその手のひらの上に指で文字を書いていった。

「くすぐったいよ」

「もう終わる」

最後に彼はちゅっと、そこに口付けを落とした。
途端に、ビリビリと弱電流のようなものが身体中に駆け巡る。

「これで完了」

「なに、したの……?」

手のひらを見ていたけれど、なにか代わりがあるわけでもない。
身体も、さっき一瞬感じたあれ以外、なにもないし。

「んー?
これから私は心桜からうんと離れるから、百数えたら呼んでくれるかい?」

「朔哉?」

「ここは滅多に来るモノがいないところだから大丈夫。
ほら、いーち……」

数えながら朔哉が離れていく。
不安はあったけど目を閉じ、言われたとおりに数を数えた。

「にぃー、さーん、しぃー……」