「それって私にもできないかな」

聞いた内容を書き留めるだけだったら、私にだってできるかもしれない。
ちょっと期待したものの。

「心桜には無理。
お願いを聞くには能力が必要なんだ。
だから、選ばれた眷属にしかできない」

「そうなんだ……」

せっかく、私にもできそうなものがあったと思ったのに、がっかり。
やっぱり私が人間だから、できないことの方が多いのかな……。

「なんでそんなに落ち込むの?
心桜はいてくれるだけでいいんだって」

「でも……」

「なにもしないのは罪悪感とかあるのかい?」

「……うん」

外で仕事をしない専業主婦だって、家事や子育てをするから認められるのだ。
なにもしないでだらだらニート生活なんて、いいわけがない。

「心桜は本当にいい子だね。
人間なんて働かずにだらだら暮らしたいって願いばかりなのに」

「そんなの、よくないよ。
みんな働いてるのに、ひとりだけだらだら過ごすとか」

「本当に心桜は可愛いな」

ぎゅーっと、朔哉が抱きしめてくる。
背後で仕事をしている人たちが見ていないか気になるが……忙しすぎて誰もこちらを気に留めていないようだ。