朔哉が差し出してくれた手に自分の手をのせて立ち上がりながら、ついつい唇を尖らせていた。

「きっとそのうち慣れるよ」

「……だと、いいんだけど」

いつか、ここの人たちと打ち解けられる日はくるんだろうか。
ううん、いつか、打ち解けてみせる。

「さ、食べようか」

食堂もテーブルに椅子だった。
朝食は旅館の朝ごはんのような和食だったけど。

「朔哉、私はここで、なにをしたらいいの?」

「ん?
別になにもしなくていいよ。
心桜は私の傍にいてくれるだけでいいんだから。
多少の不自由はあるだろうけど、心桜の好きにしたらいい」

「はぁ……」

本当にそれでいいんだろうか。
それってなんか、落ち着かないな……。

「炊事とか洗濯とかしなくていいの?」

「心桜が?」

さぞ不思議なものでも見るかのように、面の奥で朔哉が二、三度まばたきをした。

「そんなの、眷属のモノたちがやるから、心桜はしなくていいよ」

「いや、そういうわけには……」

これってあれか?
セレブの奥様的立場なのか?
確かに、神様の朔哉はセレブといえばセレブなんだろうけど。