朔哉に連れられて屋敷の中を歩く。
私が歩くたびにチリンチリンと騒がしい音がした。

「ひぃっ!」

「うわっ!」

先々で、人々が逃げ惑う。
それはあまりいい気はしないけれど、彼らにとってはもし顔を見られたら消滅の危機なのだ。
いくら面を着けていても安心できないだろうし、仕方ない。

「きゃーっ!」

目の前を、子狐が必死に逃げているが、距離は広まるどころか縮まっていく。
直衣姿でてとてとと二本足で歩いている姿は、非常に可愛いくて微笑ましく、ついつい顔が綻んでしまう。
しかも、ふさふさと尻尾が目の前で揺れると、モフモフしたくなる。

――ビタン!

とうとう子狐は目の前で――こけた。

「大丈夫!?」

子狐はなかなか立ち上がらない。
もしかして、打ち所が悪かったのかな。
しゃがんで手を貸してあげたものの。

「く、く、食われるー!」

ぎゃーっと泣き声を上げたかと思ったら完全に狐に変化し、子狐は四つ足で逃走していった……。

「よっぽど心桜が怖いんだろうね」

お腹を抱え、朔哉は可笑しそうにくすくす笑っている。

「……食べたりしないのに」