雨が降っているというのに不思議と濡れなかった。
きっと、そういうのものなのだろう。

「心桜」

案内された神殿では、紋付き袴の彼が待っていた。

「本当にありがとう」

私の手をぎゅっと握る彼に伴われて祭壇の前に立つ。
神殿の中で面をつけていないのは私ひとり。
完全にアウェイだが、ここでやっていくと決めたのだ。

「緊張してる?」

小さく頷いたらまた、彼が手をぎゅっと握ってくれた。

「私は心桜を幸せにして守るよ。
これは、心桜に誓うから」

彼が私から手を離し、厳かに式がはじまった。

私は今日、――お稲荷様の妻になる。