「神が人間と会っていいのは子供のうちだけなんだ。
大人になると会えない」

「そんな……」

朔哉との関係はこれからもずっと、私がお婆ちゃんになっても続くのだと思っていた。
それなのに突然、そんなことを告げられても困る。

「……じゃあ私、大人にならない」

「心桜?」

「朔哉と会えないなら私、大人になんかならない!
ずっと子供でいる!」

短くはぁっと朔哉の口から落ちたため息は困った子だねとあきれているようで、ますます意固地になった。

「大人になんかならなくていい。
朔哉だったらずっと子供のままにだってできるよね!」

「……心桜」

両手で私の顔を挟み、鼻を突き合わせていた。
深い深い、夜の闇のような群青の瞳と、眩しく明るい、満月のような瞳が私を見ている。

「確かに、できるよ。
でも心桜がずっと子供のままだったら、ご両親はどう思う?
きっと、悲しむよね」

「……うん」

最初のうちはいいかもしれない。
十七歳も二十歳も、その少し先だって変わらなくてもわからないだろう。

でももっと先は?

周りはどんどん年をとっていくのに、私だけ若い、十七歳のままだったら?