「当たり前でしょ、心桜は私の大事な……友達、なんだから」

うか様の耳はほんのり赤い。
そういうのは本当に嬉しい。

「ありがとうございます、うか様」

「……うん」

目を伏せて頷き、うか様はとうとう黙ってしまった。
いくら千歳を超えていようと、女の子はいつまでたっても乙女なのだ。

また来るし、元気になったら蔵の片付けをしに来てちょうだいと、うか様は帰っていった。

「うか様、私のこと、友達だって」

「よかったね」

頼れる人は朔哉しかいなかった世界だけど、少しずつ変わっていく。
それにさっきから、ドアの隙間からちらちらと中をうかがっている子狐たちがいる。

「なにをやっているんだい?」

「うわっ」

朔哉がドアを開けると同時に、五匹の子狐が崩れた。

「その、心桜様」

「心桜様」

「お目覚めになったって」

「だから、お見舞い」

「お見舞い!」

朔哉の手に摘んできたであろう花を押しつけ、きゃーっと逃げていく。

「……なんなんだろうね、あれ」

「ふふっ、可愛いな」

手渡されたのは、導き草の花束だった。

「前は私の姿見ただけで逃げ惑ってったのに」