「でも無理はしないって約束しただろ。
どういう事情があるにしろ、黄泉に行くのは完全に無理だ」

「うっ」

びしっ、と朔哉の人差し指が鼻先に突きつけられる。
これって約束違反になるのかな……?
そうすると私は、檻に閉じ込められちゃうわけで。

「もう少しで死ぬところだったんだよ?
お腹の子に感謝しなさい」

「……なんで?」

お腹の子に詫びなさい、ならわかるのだ。
こんな危険なことをして、私どころか赤ちゃんの方が命の危機にさらされていたんだし。

「……はぁーっ」

朔哉の口から、重たいため息が落ちる。
そんなに呆れられることですか?

「お腹の子は小さいとはいえ、もうすでに神だ。
この子が神の力で心桜を守ってくれたんだ」

「……そうなんだ」

そっと、お腹を撫でてみる。
この子が、私を守ってくれた。
まだお腹は膨らんでいないけれど、すでに愛おしくてたまらない。

「あとは、言の葉だね」

隣に座った朔哉は、私の腰を抱くようにしてお腹を撫でる手に自分の手を重ねた。

「心桜が命がけで持ってきた、言の葉があったから。
心桜は元気になるって言霊をかけた」

「ありがとう、朔哉」

朔哉が面の奥から、じっと私を見つめる。