理由がわかっていれば、防ぎようだってあったのだ。

「心桜の懐妊と同時に、私も徐々に人間化がはじまるんだ。
それで……風邪を、ひいた」

「風邪!?」

思わず身体から力が抜ける。
あんなに心配して損した、っていうか。
いやいや、風邪だって放っておけば死ぬ可能性だってあるっていうし。

「初めて風邪なんてひいただろう?
だから身体が対応しきれなくて高熱が出たというか……」

だから、手厚い看護で寝ていたら治ったんだ。
いやちょっと待って、それだと私が、命がけで黄泉に行った意味は?

「目が覚めて、心桜が黄泉に行ったなんて聞いて生きた心地がしなかったよ。
なんで勝手に決めてしまうかな、そういう大事なこと」

「勝手にって!
……いやまあ、勝手になんだけど。
だけど、朔哉は熱でうんうん唸ってて、意識なかったじゃない!」

「うっ」

そうだそうだ。
だいたい、私が行ってきますって言っても、やっぱり熱でうなされていただけだし。
いや、だから相談しようにもできなかったって責めるのは、お門違いな気もするけど。