なんだかそれがくすぐったくて嬉しかったけれど、あとからそれがどんなことが知って怖かった。

「いつでも遊びに来い。
歓迎する」

「うん、また遊びに行くね。
ありがとう、お兄ちゃん」

朔哉に背中を押され、一歩踏み出す。
振り返ったときにはもう、朔哉の姿は消えていた。
代わりに。

「おい、心桜ちゃんじゃないのか!?」

「怪我はないか!?」

数歩も歩かないうちに、私を捜していた大人たちに見つかった。
暗くなっても私が帰らないから、幸太の話を元に山狩りをしたらしい。
けれど、山頂まで三十分もかからない小山なのに、いくら探しても見つからない。
山ではなく、人さらいにでも遭ったのではないかと創作方法を切り替えようとしていた矢先、ひょっこりと私が出てきたらしい。

私が見つかって両親は号泣していて、そんなに心配させたのかと驚いた。
おかげで少しだけ、田舎に馴染む努力しようと思えた。

それにこの件で幸太はがっつり絞られたらしく、ちょっとだけおとなしくなったし。



「朔哉ー、頼まれてた本、持ってきたよー」

森の奥へ向かって声をかける。

――ぽっ。