朔哉が手のひらを上にしてふーっと息を吹きかけると、ぽっと蒼白い炎が灯った。

「なにこれ?
手品?」

「怖いか?」

「ううん、きれい」

私の返事に、朔哉は嬉しそうにあたまを撫でた。

ふわふわと飛ぶ狐火に取り囲まれて森の中を歩く。
いくらも歩かないうちに人家の灯りが見えるところまできていた。

「ここから先に私は行けない。
ひとりで行けるな?」

「うん」

私を地面に降ろし、視線を合わせるように朔哉はしゃがみ込んだ。

「それから。
私にあったことは誰にも話してはいけない。
約束できるな」

「なんで?」

両親に話して、あとでお礼に来なければいけないに決まっている。
なのに。

「お前が私のことを誰かに話したら、私はお前を殺さなければいけなくなる」

急に低い声で重々しく言われ、思わず喉がごくりと鳴った。

「……うん。
わかった」

気圧されて私が頷くと、さっきまでの恐ろしい空気が一変して朔哉のそこだけしか見えていない口もとが、にっこりと笑う。

「いい子だ。
じゃあ、約束しよう」

「うん」

差し出された小指に自分の小指を絡めて指切りする。