「おはよう、心桜」

「おはよう、朔哉」

私の髪を一房取って、ちゅっ。
毎日の、朝の光景だ。

ベッドから出ると、環生さんたちがたらいと水差しを持って入ってくる。
顔を洗って、髪を梳いてもらって。

「ありがとう」

「……失礼いたしました」

相変わらず、言葉を交わすのなんてこれしかないけれど。
でも、たすきの端ではタンポポとレンゲの模様が揺れている。

「今日はどんなのにしようかなー」

戻ってきた朔哉がぱちんと指を鳴らせば、私のお着替えは終了。
今日は縞の着物に大きなリボン風の帯、裾は短めで襟元ともにレースがのぞいている。

朝ごはんを食べて朔哉はお社へお仕事に、私は――。

「今日もよろしくお願いします」

「では……」

宜生さんに頼んで、こちらの世界のことを勉強中。
朔哉が神様だと理解したあとから、なんとなく神話なんか読んで調べてみたりもしていた。
嫁ぐことが決まってからはさらに。
けれどあれは人間目線で書いたもので、正確なこちらのことではない。
なのでいまさらだけど、いろいろ教えてもらっている。

「ほんと、いろいろなんだねー」