処分なんてされず、みんなの手に渡っただけでもよかったのに。
さらに使ってくれているとなると嬉しい。

「……使ってくださってありがとうございます」

ぴくん、と光生さんの手が止まる。
そのままわたわたと慌てだしたけれど、環生さんにこほんと咳払いされてやめた。

「……こちらこそ、ありがとうございます」

初めて聞く、環生さんの声。
そちらへ視線を向けると、ふいっと逸らされた。
けれど髪の間からのぞく耳は赤くなっている。

認められたかどうかはわからない。
でも、少しは歩み寄れた。
これからも少しずつ、仲良くなれる努力をしよう。