「今回は受け取っておきますが。
今後はこういうことをされる前に相談なさってください」

「……はい」

喜んでくれるなんて浅はかな考えだった。
ここで私は、異物でしかないのに。

「では、失礼いたします」

宜生さんはそれ以上口を開かず、たすきを抱えて出ていった。
あれは処分されてしまうのかな。
私の努力は全くの無駄だった?

「こーはる」

手を広げた朔哉が、私をぎゅっと抱きしめてきた。

「心配しなくて大丈夫だよ」

「……うん」

出てきそうになっていた鼻水を、ずびっと慌てて啜る。

「宜生はあれがどういうものか、ちゃんとわかっているし。
だから、大丈夫」

「……うん」

朔哉はきっと、落ち込んでいる私を気休めで慰めてくれている。
わかっていたけどそれだけでもちょっと、救われた気がした。

――さらに。


朝起きて、いつも通り環生さんと光生さんが身支度の手伝いに来てくれる。
髪を光生さんに梳いてもらいながら鏡越しに見えた、彼女のたすきの端に、見覚えのある模様が見えた。

……あれ?

少しだけ視線をずらし、環生さんのたすきの端も確認する。
そこにも。

……使ってくれているんだ。