携帯を出しかけて、止まった。
目の見えない陽華さんは、入力ができないんじゃ。

「僕は携帯、持たされていないんですよね」

ははっ、小さく彼が笑った。
心配は無駄に終わったけれどこれじゃ、連絡を取りようがない。

「たまに、でいいんで遊びに来てください。
あああってうか様もあなたのこと、気に入っているんですよ」

また前を向き、陽華さんは歩きだす。
もしかしたら彼の勘違いかもしれない。
それでも。

――うか様が少しでも、私を認めてくれていたら、嬉しい。

「ただいまー」

「おかえり、心桜」

今日も待っていた朔哉に、ただいまのハグをする。
一緒に行った食堂にはすでに、昼食の準備が整っていた。
ちなみに今日は、薬味たっぷりの素麺と、定番のいなり寿司だ。

「あのね。
お仕事終わったから明日から、うか様のところへ行かなくてよくなった」

「本当かい!?」

なぜか、嬉しそうにぱーっと朔哉の顔が輝く。

「うん。
もういいって言われたし」

「よかったー。
心桜はついつい頑張りすぎてしまうから、心配だったんだよ」

うんうんと朔哉は頷いている。
まあ、そうだよね。