だったら彼の言うとおり、彼が死んでもそのときは悲しんでもそれだけなのかもしれない。

「もうこちらには来られないんですよね……」

はぁっ、と落胆の色の濃い、ため息を陽華さんはついた。

「そうですね。
お仕事は終わりましたし」

「残念です……」

その残念はなんですか!?
私が来なくなって、機嫌の悪いうか様から激しく当たられる機会が減るのが残念なんですか!?

「ここで私以外の人間に会ったのは心桜様が初めてだったので、仲良くなりたいと思ったのに……」

予想とは違う、あまりにも普通の答えについ足が止まる。

「仲良く、なりたい?」

「はい。
神に仕えたい人間など、私と同じ性癖の方かと」

すみません、そこは全然理解できません。
私は殴る蹴るされても嬉しくないし、朔哉も絶対、そんなことしないし。

「その。
性癖はよくわかりませんが、仲良くはなれるかな、と」

「ほんとですか!?」

ぐるんと勢いよく振り返った陽華さんが、私の両手を掴んでくる。

「いやー、こちらで暮らす人間ならではの悩みとかあると思うんですよね。
そういうの、お互い話せたら」

「はい。
じゃあ、連絡先……」