食べ終わった皿を下げながら男にじろりと睨まれ、びくんと身体が震えた。
けれど今度は男が朔哉に睨まれ手びくっと身体を震わせ、慌てて部屋を出ていった。

御稀津(みけつ)朔哉だ。
ここに住んでいる……変わり者だ」

朔哉はなにかを言いかけたけれど、こほんと咳をして誤魔化してしまった。

「いっぱいお家の人がいるんだね」

「まあな。
住んでいるモノは多いが、私はひとりぼっちみたいなものだな」

淋しそうに笑う朔哉が、学校での自分に重なった。

「私と一緒だね。
私、学校でひとりぼっちなんだ。
そうだ、おにいちゃん。
私と友達にならない!?」

「お前と私が友達、……だと?」

私としてはこれ以上ない、いい案だと思っていた。
いまにして思えば、大それた考えだけど。

「ダメ?」

かくんと小首を傾げ再度訊いてみる。
朔哉はうっと、声を詰まらせた。

「ま、まあ、いいだろう」

「やったー」

私は友達ができたとうきうきだったし、黒髪の間からのぞく朔哉の耳も赤くなっていた。

送ってやると朔哉にひょいと抱えられた。
屋敷の敷地を一歩出た途端に、真っ暗な森になる。