あと五冊。
あと三冊、二冊、一冊……。

「おわったー!」

「ねえ。
いつになったら出ていくのー?」

私が勝利の万歳をすると同時に、うか様が入ってきた。

「え?
終わったって、なにが?」

なにがって、見たらわかりますよね?

うか様は私の前に座り、頬杖をついた。

「まさか、終わらせるなんて思ってなかったなー」

手持ちぶさたそうに、指でくるくると毛先を弄ぶ。

「すぐにピーピー泣いてこなくなるだろうって思ったのに、毎日欠かさず来るし」

思わず、唇を尖らせてしまう。
ピーピー泣いてとか、失礼な。

「いくら出ていけって脅しても、出ていかないし。
ほんと、期待外れ」

毎日私を出ていけって脅していたうか様だけど、ここ最近は本心じゃない気がしていた。
もう習慣になっているから、そう言っているだけのような。

「いびり損だったなー」

本心、漏れていますよ?
やっぱり朔哉の言うとおり、私を虐めていたんだ。

「終わりましたので、次はなにを?
もう百年分やりますか」

作業には慣れたし、あと百年分どころか五百年分くらいは軽い、軽い。
うか様のことだから千年分とかいいそうだけど。