その後、水瀬は本当に結婚した。


本当にって言い方はおかしいけれど。
ちゃんと…結婚した。


一応結婚式の招待状も貰っていたけれど、行かなかった。


行けないよ。

泣いてしまう自信しかない。



「杉岡さん、外線11番にお電話が入っております」
「あ、はーい」



今日も変わらず、お仕事。



水瀬とは、あの夜から顔を会わせていない。


でも、もう良いの。


会おうとしなければ会わないし。

水瀬もわざわざ会いに来ることも無いだろうし。


「はい、かしこまりました。それでは、失礼致します」


……大好きな、水瀬。


私の心の傷が癒えるまで。
水瀬に『結婚おめでとう』と、言えるその日まで。



あの日の夜の水瀬だけは
いつまでも、私の胸の中で———……。












大好きだよ、水瀬。  終