結局その違和感を一日中感じたまま過ごし、違和感が決定的になったのはその日の放課後のことだった。
今日は神楽部の活動があったので女子更衣室で緋袴に着替えてから神楽練習室へ向かう。
いつも通り「失礼します」と一連してから中へはいると、やはり沢山の視線が私に向けられていた。
近くにいた三年生の先輩たちに「こんにちは」と挨拶をする。いつもなら朗らかに返してくれるはずなのに今日は「ああ……うん」とぎこちない。
ちらりと私を一瞥した先輩たちはお互いに顔を近づけてヒソヒソと小声で何かを話す。
なんだか凄く嫌な感じで、でも戸惑いの方が大きかった。今までそんな風に嫌な雰囲気を感じとったことはなかったからだ。
上下関係はそれなりにあるし日々小さな諍いはあれども神楽部はいつでもみんな仲良く和気あいあいとしていた。もちろんそこに仲間はずれなんてものは一切ない。
その変化を受け入れたくはないけれど、ただこの場に漂う空気感がいつもと違うのは間違いなかった。
部活が始まる時間になって、「準備運動するぞー」と3年生の先輩が声をかけた。部長たちが来ていない時にいつも仕切ってくれる先輩だ。
「二人一組になって柔軟!」
そばにいた中等部の女の子に声をかけようとしたけれど、目が会った瞬間眉根を寄せたその子はふっと顔を背け別の友達とペアになってしまった。
戸惑いでおろおろとしている間に次々ペアが出来ていく。結局私一人だけがあぶれてしまった。
盛福ちゃんと玉珠ちゃんの所に入れてもらおうと思ったけれど「じゃあ前屈から」と声がかかる。