朝、身支度を整えて大広間へ向かう階段を降りているとやけに背中に視線を感じるような気がした。
パッと振り返ってみても誰かと目が合うわけでもなく、首を傾げながら大広間へ入る。
大広間の扉を開けた瞬間、入口のそばに座っていた中等部の男の子たちと目が合った。「え?」と思いながらも中へはいると、男の子たちだけではなく中にいたほとんどの生徒がこちらを向いているの気が付く。
いつもは騒がしい広間内がしんとしていて、誰かが何かを囁く小声だけがぼそぼそと聞こえる。
しかしそれは一瞬で、すぐにいつもの賑やかさに戻った。
一体なんだったんだろう……?
不思議に思いながらも厨房でお膳を受け取って、席を探す。いつもの場所にみんながいて「おはよう」と声をかけた。
「お、巫寿はよ〜」
「おはよう巫寿ちゃん」
いつも通りの挨拶が返ってきて、やっぱりさっきのは気のせいだったのかと息を吐いて腰を下ろす。
「なぁなぁ巫寿、呪法基礎学の課題もうやった?」
「昨日やったよ。でも締切はまだ先だからそんなに急がなくても────」
言葉を止めて振り返った。その瞬間パッと周りにいた学生たちが顔を背ける。やっぱり変だ。今日はやけに視線を感じる。
「どした? 巫寿」
「……ううん、何でもない」
他のみんなは何にも感じてないみたいだし、やっぱり気のせいだよね。
小さく首を振ってお椀に口をつけた。