「巫寿も取りに来て」
「あ、はい!」
急いで立ち上がって教卓の前に立つ。
はい、と手渡されたのは社の鳥居と同じ綺麗な朱い袴だ。慎重に両手で受け取る。
今まで緋袴は何度か履いたことがあるけれど、どれも借り物だった。こうして自分の袴をもらって、ちょっと感慨深い。
この色に恥じない知識と実力を身に付けたい、自然とそう思えた。
ふと顔を上げると、私の周りを皆が興味深げに囲っている。目を瞬かせた。
「え……? どうしたの皆」
困惑しながらみんなの顔を見比べる。すると慶賀くんが「いやぁ」と頭をかいた。
「レアな袴が見れると思ったんだけど、そういや巫寿は巫女職だったな」
「緋袴って分かってたけどちょっと期待しちゃった」
「だって滅多に間近で見れるもんじゃねーしな」
なるほど、と苦笑いを浮べる。
私が直階一級を取ったから、一級の白に白紋の袴が見れると思ったらしい。
残念ながら私は巫女志望なので、どれだけ階位階級が上がろうとずっと緋袴だ。
薫先生が顔の前で手を打った。
「はいはい、皆席について。袴は綺麗に畳んで仕舞っとくんだよ。今後の実習はそれを着て受講するようにね」
はーい、と皆がぞろぞろ席に戻る。
とにかく今日から二年生だ。勉強も実習も難しくなる。気合を入れて頑張らなきゃ。