険しい顔のおじさん達の話によれば、昇階位試験の時に私を担当した神職さまは読心(どくしん)の明と呼ばれる授力を保有していたらしい。

読心の明、その名の通り生き物の心を読む力だ。

あの神職さまが読心の明を使用したことで、試験後の車の中で待機している時に私が先見の明を使ったことに気が付いたらしい。

そして私が授力、それも先見の明を使用したことが上に報告されて、今回の一件に繋がったんだとか。

詳しい話はそれだけしか聞けていない。薫先生があの場から私を連れ出したからだ。「後日また呼び出す」と最後に言われたけれど薫先生がそれも一蹴した。


なぜ私が「直階一級」を取得できたのかはまだ謎のままだけれど、正直あの場から離れられて凄くほっとした。

自分の意と反して勝手に口が動き言葉を紡ぐことがあんなにも怖いとは思わなかった。まだちょっとだけ指差しが震えている。

深く息を吐いて、震えを止めるように上から反対の手で押さえつけた。

とにかくまだ昼間なのにどっと疲れた。


薫先生は寮の前まで送ってくれた。他の学生がぞろぞろと中へ入っていく。奉仕報告祭がちょうど終わったんだろう。

玄関で足を止めて振り返る。


「巫寿は何も心配しなくていいよ。今回の件は俺と禄輪のおっさんで対応するから。でももし巫寿個人宛に本庁から連絡が来たら、一度俺たちに教えて」

「分かりました」


こくりと頷くと薫先生は眉を下げて少し目を細めた。


「これから結構キツいと思う。どうしようもなくなる前に、俺でもクラスメイトでもお兄ちゃんでも、誰でもいいから頼って」

「え……?」