「巫寿さん、あなたは試験中にそのもうひとつ授力を使用しましたか」
私が「はい」と答える声と薫先生の怒鳴り声が重なる。
口が自分の意思とは反対に勝手に動く。怖い。自分じゃないみたいだ。どうしてこんな。
「そのもうひとつの授力は、先見の明ですか」
薫先生が何かを言いかけて大きく目を見開いた。驚きと焦燥に満ちた表情で私を凝視する。
ばくん、ばくん、と心臓が大きく波打つ。
それに答えるつもりはないのに、言葉はもう舌の上まで出てきていた。唇が離れる感覚がやけにゆっくりに感じる。
息を吸った、そして。
「────はい」
誰かが息を飲んだ音が、やけに大きく響いた。