使えるようになったのは三学期の神社実習で、実習先の社の巫女である花幡志らくさんさんに教えてもらって使えるようになった。
授力の保有者届は本庁に提出していないけれど、実習の報告書に私が鼓舞の明を使ったことを記載したから本庁の人達が知っていてもおかしくない。
右端のおじさんが二人に目くばせをする。
なんだか嫌な感じだ。
「では、巫寿さんは鼓舞の明以外にも授力を持っていますか」
「はい」
はい、と迷わず答えた自分に驚いた。だって頭の中ではその質問に答える事を躊躇っていたからだ。
鼓舞の明は仕方がなかったけれど、授力のことは親しい人以外には話してはならないと禄輪さんから言われていた。
そのいいつけを守って、クラスメイトや親友にも一切話してこなかった。
授力をもうひとつ持っているのは間違いない。もうひとつ持っているのは先見の明、先を読む力だ。
まるで口が勝手に動いたようだった。目を見開いて自分の口を抑えると、私のその異変に気が付いた薫先生が怖い顔をして三人を睨む。
「……質問に全て答えるように、巫寿に言霊を使ったな」
薫先生の声に呪が混じる。敬語も外れた。とても怒っているのは見なくてもわかる。
でも、どうして私に言霊の力を……。
「お前らがしている事は神役諸法度違反だ。もう巫寿は連れて行く」
立ち上がった薫先生が私の二の腕を掴んだ。引っ張られた弾みで立ち上がる。