「私は一人で会議室へ来るように伝えなさいと、あなたへ連絡したはずだが?」

「一人で来て欲しいなら巫寿に直接伝えるべきだったんですよ、おじいちゃん」


その瞬間空気がぴしりと凍りついた。

もちろんこの人が薫先生のおじいさんであるはずがない。明らかに相手を挑発する言葉だった。


「出ていきなさい。これは本庁からの命令だ」

「俺は保護者から巫寿を預かってる身としてこの場に同席してます。この子の兄貴がどれだけ優秀なのか知ってますよね。ジジイ────ジジイ三人で可愛い妹に詰め寄ったなんてことがバレたら、また優秀な人材を逃すことになると思いますけど」


明らかにジジイって言ったし、言い直そうとしたけどやっぱりジジイって言った。それでいいんですか薫先生。


言葉に詰まらせた役員たちに、やれやれと息を吐いた。

お兄ちゃんも三月の昇階位試験を受けていて、正階二上級を取得している。お兄ちゃんは中等部から神修には通っておらずこれまで独学で神職の勉強をしていたらしい。

"階位は取れても階級はそう簡単に取得できるものではなくいから、お兄ちゃんは凄いんだぞ"と耳にタコができるほど聞かされた。


何度もしつこく聞かされすぎて凄さが半減していたけれど、階級だけで言えば薫先生の一つ下だ。お兄ちゃん、本当は凄かったんだ。