良かった、と息を吐いた。
やっぱり届いてなかっただけなんだ。でもじゃあ何で薫先生は私に送ってくれなかったんだろう。
薫先生が前かがみになって膝に肘を着いた。組んだ指に手を乗せて床を見つめる。
「合格してるんだよ、巫寿。直階一級に」
一瞬「ああそうなんだ」と流してしまったけれど、薫先生の言葉を頭の中で繰り返し違和感に気が付いた。
直階、一級?
「今一級って言いましたか……?」
「うん、言った。巫寿は直階一級に合格してる。あとで合格証明書見せてあげるよ」
あまりにも予想外の出来事に、頭が理解するのにかなりの時間がかかった。
一級、一級……?
日本神社本庁が定める神職の階位は六つあって、下から出仕、直階、権正階、正階、明階、浄階の六つ。これは神職に必要な知識をどこまで理解しているかを示している。
そして言霊の力の実力を示すのが階級で、四級から二級、二上級、一級、さらにその上に特級がある。一級は上から二番目、ほとんどの神職は到達できずに定年を迎える階級だ。
大体の神職は取れても正階三級までだし、私のようなまだこの世界に来て一年ちょっとの人間が取れるような階級ではない。
「巫寿に限って絶対そんな事は無いと思うし俺も信じてあげたいんだけど、一応聞かせて」
戸惑いながらもひとつ頷く。
「試験で不正はしてないよね?」