車に揺られること一時間と少し、ゆっくりとスピードを落とした車がやがて停車して、私たちはぞろぞろと車から降りた。
降りた瞬間、強い風が吹いて髪を押さえた。
微かな生花の匂いが届き顔を上げる。景色を埋め尽くすほどの桃の花とそこからぬっと顔を出す朱い鳥居に顔をほころばせた。
「帰ってきたね」
そう呟くと皆が「だな〜」と相槌を打つ。
たった一年しか過ごしていないけれど、間違いなくこの場所は私のもうひとつの帰る場所になっていた。
「おーい、皆」
鳥居にもたれかかって手を振る人影が私たちを呼ぶ。
紫色の袴を身につけ、微笑みを浮かべたその人物に私たちは「あっ」と声を上げた。
「薫先生!」
「久しぶり。春休みは大人しく過ごしてた?」
一年の時の私たちの担任、神々廻薫先生だ。
みんなで先生の周りを囲むと、薫先生は嬉しそうに笑った。
「朗報だよ、今年も君らの担任はこの俺になりました」
「ええ〜」
「あはは、何その反応。もちろん嬉しいよね?」
「中学の時から薫先生だぜ? そろそろ飽きたって」
ひどい、と泣き真似を始めた薫先生に思わずくすくす笑う。
このやり取りですら神修に帰ってきたんだと実感させる。