「みみみ、巫寿さん。ああああの女の子はどちら様でしょうか……? ままままさか彼女じゃ……!」


引き攣った顔の玉珠ちゃんが私の二の腕をガッツリと掴んで目をかっぴらく。


「あー……違うよ」

「本当ですか……!?」

「うん、違うよ」


今はね、と心の中で付け足す。

良かった!と安心する玉珠ちゃんに、少し申し訳ない気持ちになった。

やっぱり泰紀さんには慶賀さんがいるから云々という話を暫く聞かされていると、社務所の扉が空いて「おおっ」とどよめきが上がった。

視線を向けるとお内裏さまの装束を纏った聖仁さんが中から出てきたところだった。

深い緑色に金の糸で模様があしらわれた束帯衣装(そくたいいしょう)だ。シンプルだけど品があって、聖仁さんの雰囲気によく似合っている。

近くにいた女の人が「格好いい〜」と息を吐くのが聞こえた。


聖仁さんが振り返った。すっと右手を差し出せば白く細い腕が載せられる。

美しい朱色の袖がちらりと見えて、頭飾りが揺れてしゃなりと雅な音を奏でた。色鮮やかな衣に身を纏ったその姿に誰もが息を飲む。

白い肌に赤い紅がとてもよく映えていた。


俯きがちに外へ出てきた瑞祥さんを、聖仁さんがすかさずエスコートする。まさに平安貴族そのもののような二人の立ち姿に言葉が出てこない。