ついに迎えた雛祭り当日。朝から気持ちいいほどの快晴で、桃の花も満開に咲いて社頭を彩っていた。
雛祭りは朝と夕の2回行われる。雛渡りももちろん二回、夜はあやかし達のための演舞だ。
今はちょうど昼の部で、参拝客がぞろぞろと参道の周りに集まり始めている。もうすぐ一度目の雛渡りが始まるからだ。
コースはまず榊家が管轄するお社の本殿前で演舞しそのまま参道を歩き社を出る。そのまま夏目家が管轄する社まで歩きながら舞って社につけばそちらでも本殿前で演舞だ。
二日間しか練習期間はなかったけれど、二日間の練習量だとは思えないくらい舞った。早朝の最終確認では一度も転けなかったし裾も踏まなかった。
きっと大丈夫だ。
盛福ちゃん達と「ドキドキするね」なんて話をしながら本番までの時間を潰していると、「あれ、巫寿!?」と突然背後から声をかけられた。
え?と振り向くと視線の先に見慣れたボブヘアの女の子が立っている。
「恵理ちゃん……!?」
「やっぱり巫寿だー! えっ何なに、どうしてここにいるの!? てかその服どうしたの? お雛さまみたーい!」
駆け寄ってくるなり矢継ぎ早に質問してくる恵理ちゃんに目を瞬かせた。
「私は先輩のお手伝いで来てるの。恵理ちゃんこそどうしたの? 家族旅行中じゃなかったけ?」
「フフフ、前に話したでしょ? 今日は────」