瑞祥さんが帰ってきた日、反橋の下できつく抱きしめていた背中を見て、聖仁さんにとって瑞祥さんがどれほどの存在なのかを知った。

それを知っているからこそ、無理をして欲しくないという思いや過剰に心配してしまう気持ちが痛いほどに分かる。


「伝わんないよね、人の気持ちって。こんなに態度で示してるのに」

「……え?」

「あれ、巫寿ちゃん気付いてるんじゃなかったの? 俺が瑞祥の事好きって」


三度ほど瞬きをして言葉の意味を理解したと同時に「ええ!?」と激しく動揺した。

なんともない顔をしてアイスを頬張りながら、とんでもない爆弾を落とした事に聖仁さんは気付いているんだろうか。


「だって三学期の辺りから、すっごいにやにやを堪えた顔で俺らのこと見てるんだもん。流石に"ああ、見守られてるんだな"って思うよね」

「やっ、あの! それはその────すみません……」


もう何を言えばいいのか分からず謝罪すれば聖仁さんはおかしそうに声を上げた。


「いいよ。別に隠すつもりもないから」

「ないっ……んですか?」


うん、とまたアイスをかじる。

あまりのあっけらかんとした態度に何だか私の方が恥ずかしくなってきた。

ふぅ、と息を吐いて暴れる心臓を落ち着ける。