「あ」

「あ……」


銭湯の靴箱でばったり顔を合わせお互いに声を上げた。

同じく湯上りの濡れた髪で肩にタオルをかけた聖仁さんが靴箱から雪駄を出している所だった。


「巫寿ちゃん、皆と銭湯行かなかったの?」

「あ、はい。衣装のお直しを頼んでたら遅くなっちゃって」


あの後の練習でも裾を踏みまくった私は縫い目がかなり緩んでしまい、衣装のお直しを頼みに行っていた。

皆を待たせるのは忍びないので先に銭湯へ行ってもらったのだ。

「そっか」と聖仁さんが笑って沈黙が流れる。絶妙に気まずい。なんとも言えない沈黙のまま雪駄に履き替えて外に出た。

4月上旬の夜の空気はまだ肌寒いけれど、風呂上がりの火照った体には心地よい。


「ね、巫寿ちゃん。アイス食べる?」


ちょっと困ったふうに眉を下げて笑った聖仁さんは、ゆの字の暖簾がかかった入口横の自販機を指さした。