むぅ、と唇を尖らせて枕に顎を乗せた瑞祥さんを見る。

少しつり目気味の大きな瞳に凛とした眉、常に自然と上がっている口角は活発な性格の瑞祥をよく表している。伸ばしっぱなしの黒髪には艶があって、背も程よく高く華奢だ。

神修では全員がほぼ顔見知りで幼い頃からの知り合いが多いからか多くの男子学生は見慣れているのだろうけれど、一歩外に出れば間違いなくモテる部類の女の子だ。


「……私だって、人並みに恋愛したい気持ちはあるけどさ。なんかそんな機会がないんだよなぁ」


そうぼやいたのが聞こえて、私は心の中でああなるほどなと理解した。

間違いなくその隣に最強の番犬が控えているから、瑞祥さんはモテるはずなのにモテないし彼氏も好きな人も出来ないんだろう。

二学期、瑞祥さんが倒れて必死に祝詞を奏上していた聖仁さんの背中を思い出す。あんなに必死になってまで守ってきた女の子だ。そう簡単に取られちゃ堪らないだろう。


にやにやしそうになるのを必死でこらえて枕に顔半分を埋める。

密かに見守ろうって決めたんだから、余計なことは言っちゃダメだ。


ただ現状瑞祥さんの方は全くその気がなさそうなので、聖仁さんには是非とも頑張ってもらいたい。