「で、で! 瑞祥さんはどーなんですか!」

「え、あたしぃ?」

「そうですよ! 後輩たちに喋らせといて自分だけ逃げるなんてズルいです!」


そーだそーだ、と玉珠ちゃんが調子を合わせる。

もごもごと口篭ると逃げるように視線を泳がせ、私と目が合うなりバッと指を指す。


「巫寿はまだ何も言ってないだろ!」

「えっ、私ですか?」


思わぬ飛び火に目を見開いた。

と言っても好きな人なんていないので発表することはないのだけれど。

ええー……と苦笑いでいると、さっきまで楽しそうにしていたはずの盛福ちゃんが急に真顔になった。


「そういうのいいです。やめてください。私たちの巫寿ちゃんに好きな男なんていません」


玉珠ちゃんまで真剣な顔でうんうん頷いている。

まだ何も言ってないのに好きな人がいないことになった。


「何だよそれ! 私だって別に……好きな人なんていないし……」

「ええっ、高三なのに!? 華の女子高生がそんな虚しい!」

「虚しくて悪かったな!」


顔を真っ赤にした瑞祥さんがそう噛み付いた。


「あんなによりどりみどりなのになぁ。鶴吉さんは性格も明るいし顔だって整ってるし。聖仁さんだってなかなか好物件じゃないですか?」

「コウブッケン? 何だよそれ」


首を傾げた瑞祥さんをサラッとスルーした盛福ちゃんは枕に頬杖をついて息を吐いた。