玉珠ちゃんは長いまつ毛を伏せて、憂いを帯びた表情で布団のしわを見つめた。


「こんな狭い界隈で、しかも考え方の古い人が多い中じゃ自由に恋愛なんてできません。だから二人はこっそり影でお付き合いをされているんです。誰にも話せず受け入れてもらえない中、二人はひっそりと愛を育んでいるんです」


愛を育む……?

どうしよう頭が混乱してきた。


「知ってますか……?あの二人、食堂で座る時は必ず隣同士に座るんです。泰紀さんは左側に、慶賀さんは右側に」


それは別にわざわざ隣同士で座っているのではなく、何となく私たちの中で座る位置が固定されているからだよ。

一応そう訂正を入れれば玉珠ちゃんは微笑みながら小さく首を振り、「私には分かるんです」。

いや何も分かっていないというか、とんでもない勘違いをしているのでは。


「それに泰紀さん、よく慶賀さんの頭を撫でているんです。それはそれは愛おしそうな顔で。いえ……本当は私からはいつもお顔は見えていないのですがきっとそういう顔をしています」

「いや、それは撫でてるんじゃなくて叩かれて────」

「私には分かるんです」


いや絶対分かってないよね玉珠ちゃん。


「あの二人には私たちには介入できない絆があります。特別な、特別な絆が……」