「あの二人、今までどれだけ頼んでも一度も参加してくれなかったのに、今回は巫寿ちゃんが今回来るって話したら"じゃあ行く!"って態度変えてさ ね。随分慕われてるねぇ」


思わず苦笑いをうかべた。

どちらかと言うとあの二人からは慕われているというよりも、間違った方向に崇拝されてしまっている。

発端は一学期に私たちが空亡の残穢を封印した事件だ。噂好きの学生たちによって瞬く間に全校生徒へ広まったその話は、下級生の間では今や伝説のように語り継がれているらしく、なんと私たちのファンクラブまであるらしい。

私たちとしては散々怒られた案件なのであまり触れないで欲しいのだけれど、学校内ではたまにこうして尊敬の眼差しを向けられる。


「三学期の神社実習で大活躍した話も聞きたがってるよ」


ぎょっと目を見張る。

まさかもう三学期の話まで広がっているなんて。だからあの二人は私に会いたかったのか。

ふたりも瑞祥さんの部屋に泊まるらしいから、今日は眠れない夜になりそうだ。


「おーい聖仁! ちょっと来てくれ!」祭壇の前で瑞祥さんが呼んでいる。

軽く手を挙げた聖仁さんは「それじゃあ今日からよろしくね。また後で」と忙しそうに走って行った。