「こら、巫寿ちゃんが困ってるだろ。それに神楽殿は遊ぶ場所ではありません」


この声は、と急いで立ち上がって振り返る。

二級の階級を示す紫色の袴を身につけたその人は、呆れたように眉を下げて腕を組んで私たちを見下ろす。

彫りの深い穏やかな面持ちに癖の強い茶髪をセンターでかき分けた髪。垂れ下がった優しげな目と目が合って、彼は微笑んだ。


「や、巫寿ちゃん。久しぶり。今日は来てくれてありがとう」


差し出された手を掴んで礼をいいながら立ち上がる。


「お久しぶりです、聖仁さん!」


高等部三年で神楽部部長、(さかき)聖仁(せいじん)さんだ。

振り返った聖仁さんは聖福ちゃん達にもう一度手刀を落とし息を吐く。


「さっき大人しくしててって言ったばかりだよね? 特に盛福はこの春から高等部に進学するんだよ? もうちょっと落ち着きを持とうか」

「だってぇ」

「だってじゃありません。ほら、もうすぐ始まるから隅で座って待ってて。玉珠も」


背中を押されて渋々歩き出した二人に小さく笑う。

ちょっと疲れた顔をした聖仁さんは私に向き直った。


「大丈夫? 倒れた時凄い音響いてたけど……」

「あ、大丈夫です。手ついたんで」


両手を胸の前でひらひらさせて、どこも問題ないと態度で示す。

聖仁さんは良かった、と目を細めた。