「巫寿〜! こっちだこっち!」
初めて訪れた大きな駅で何とか待ち合わせの約束をしていた改札口を出ると、すぐに私の姿を見つけてくれた瑞祥さんが大きく手を振った。
ホッと息を吐いてこちらも手を振り返す。
ジーンズにパーカーを合わせた私服姿だ。学校にいる間は寝巻きかジャージ、制服姿しか見かけることはないので少し新鮮だった。
高い位置でひとつに縛ったストレートの黒髪をひらひらと揺らしながら駆け寄ってくると、足の勢いを緩めることなくそのまま飛び付いてきた。
う、と鈍い声が出る。お構いなしにきつく抱きしめられた。
「ず、瑞祥さん……お久しぶりです」
「久しぶりだな! 元気してたか!? 相変わらず可愛いなぁ!!」
ぐりぐりと頭を撫で回されて肩を竦める。
「わざわざ迎えにきてくださってありがとうございます」
「手伝いを頼んだのは私たちだからな、これくらい当たり前だぞ! むしろ来てくれてありがとな!」
こっちだ、と歩き出した瑞祥さんの隣に並んで歩き始めた。
「それにしても四月に雛祭りってちょっと珍しいですね」
「うちと聖仁の社は旧暦で祝うんだよ。だから四月三日なんだ」
なるほど、と一つ頷いた。
修了祭の日に聖仁さんにから「社の行事を手伝ってほしい」と頼まれて、生まれて初めて一人で新幹線に乗った私は東海地方にやってきた。聖仁さんと瑞祥さんのお家が管轄するお社が明後日に開催する、雛祭りの行事を手伝うためだ。
お社がご近所同士なのと神話では御祭神が夫婦だったこともあり、毎年雛祭りの行事は二社合同で行っているらしい。