「────いや、違う。問題はそこだけじゃない」
え?と禄輪さんを見た。
何かに気が付いたように目を瞠る禄輪さんがゆっくりと顔を上げた。視線が絡み妙な緊張感が背筋を駆けた。
違うって、一体が何が。
「騰蛇と巫寿の結びを破ろうとしたのは二人が離れている間、つまり一学期の後半ということになる。その頃だと、一方賢はとっくに動けなくなっている時期だ」
確かに禄輪さんの言う通りだ。
方賢さんはあの場で意識を失って、意識が戻らないまま本町の役員に連行されていった。
何かを企んでいたとしても、実行できるはずがない。
「つまり騰蛇の存在を知っている人間は四人。私と祝寿と一方賢、そしてもう一人いるはずだ」