車の周りは見送りにきている学生で溢れていた。瓏くんのよくきく鼻のおかげであっさりとみんなと合流する。
「よかった、帰る前にもう一度会えて……って、その服どうした?」
胸の部分がびっしょり濡れた私の白衣に鬼市くんが不思議そうな顔をする。
色々ありまして、と頬をかけば余計に怪訝な顔をされた。
「さっきは恵衣に邪魔されたから……改めて、ありがとう」
今度は抱擁ではなく握手を求められた。迷わずその手を握り返す。
「こちらこそありがとう。皆が帰っちゃうの、ちょっと寂しいな」
「またすぐ会える」
いつ会えるかなんて分からないけれど、そう言ってくれた鬼市くんの心遣いが嬉しかった。
「そうだね。会えたら嬉しいな」
「いや、だから本当にすぐ会えるって」
微妙に話が噛み合ってないような気がして「え?」と聞き返す。
いつか皆で遊ぼうねとは約束したけれど、具体的な日付はまだ決めてなかったはずだ。
「異文化交流会は一学期がそっち主催で、二学期が鞍馬が主催。だから二学期は、巫寿たちがこっちに来ることになる」
「え、そうなの……!?」
振り返ると皆がうんうんと頷いた。どうやら知らなかったのは私だけらしい。
交流学習が始まる時もそうだった。薫先生、大事なことは何一つ教えてくれないんだから。
「だから今度は俺が、向こうで待って────」
「誰もあなたのことなんて待ってませんし歓迎もしませんから」



