「まず幸魂修行についてだが、無事成功している。あの修行が滞りなく進めば、最後は立ち上がって神遊びを始めるんだ。神遊びは分かるな?」
ひとつ頷く。
神遊びは神楽の別称、神前で歌や舞を奏することをそう呼ぶのだと巫女舞の授業で習った。
確かに禄輪さんに腕を掴まれて我に返ったとき、自分は立ち上がっていた。
じゃあ私の言祝ぎは無事に元の量に戻ったんだ。
椀を支えていた掌をじっと見つめる。前と何も変わらない気はするけれど、心做しか体は軽い。私の思い込みかもしれないけれど。
「眞奉も戻ってきたことだし、もう問題ないだろう」
振り返ると眞奉はゆっくり顎を引いた。
「後で何か祝詞を試してみなさい」
「分かりました」
「それで、眞奉からも何か話があるらしい」
視線を向けた禄輪さんに眞奉はまたひとつ頷いた。
おそらくさっき私に言っていた「禄輪さんも交えて話したいこと」なんだろう。
「巫寿さまが私のことをお忘れになっていたことについてですが」
う、と言葉を詰まらせる。
「巫寿さまから離れ禄輪のもとへ向かった後、何度か私と巫寿さまの結びを断とうとした者がおりました」
私と眞奉の結びを断とうとした者……?
でも確か、結びって十二神使側からじゃないと解除できないはずじゃ。
「ご存知の通り結びは十二神使側からしか破れませんので最終的には諦めたようですが、巫寿さまから私に関する記憶を抜き取ったようです。呪自体は非常に弱いものだだたので、巫寿さまご自身で破ることができたのかと」