言祝ぎの子 伍 ー国立神役修詞高等学校ー



皆が黙り込んだ。気まずい沈黙が流れる。


「はーい、薫先生。質問です」

「どした聖仁」


そんな空気を破るように聖仁さんが手を上げる。案の定傷口に響いたのか「いてて」と顔を顰め、瑞祥さんから「阿呆か!」と叱責を受けた。


「このお菓子パーティーって俺たちを労うパーティーなんですよね?」

「うん。その通りだね」

「じゃあ責任の所在を探すより、こうしてまたみんな元気に過ごせていることを喜ぶべきですよね?」

「あはは、正しくその通りだよ」


聖仁さんは目を細めて二人の顔を交互に見た。


「後悔したり責めたり、思うところは沢山あるかもしれない。でも過ぎたことはもうどうにもできない。だったら過去を呪うより、今この瞬間を言祝ぐべきだと思わない?」


ね、と隣に座る瑞祥さんに同意を求める。瑞祥さんは優しい顔で大きく頷いた。

くしゃりと顔を歪めた慶賀くんが歯を食いしばって泣き出した。嗚咽まじにり「ごめんなさい」と何度も繰り返す。


「一番大怪我してるコイツがもういいって言ってんだから、そんなに泣くなよ慶賀〜」

「そうそう。お陰様で瑞祥が何でも言う事聞いてくれるからかなりいい気分だし」

「それはそれで問題発言だぞ」


夫婦漫才のようなやり取りに笑い声が溢れる。